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CUBE創設を支えた人たち

数々の言葉が、人生を勇気づけてくれる。大学職員:藤井 由梨。CUBE在任期間:2008年4月~2009年5月

誰よりも早く、CUBEの魔法にかかってしまった。

Q.
受験生たちよりも先に魔法にかかったのは、藤井さんだったとか?
藤井

そうなんです(笑)。開設準備室が立ちあがって、佐藤さんから職員に向けてお話があったのです。
「若者たちを元気にしてやりたい。日本の教育を変えたい」と。こんな学校を作りたいんだという話を聞いて、自分が過ごしてきた大学生活とぜんぜん違って。これはすごい!こんな学校があったら絶対に行きたい!と思いました。

佐藤

藤井さんは、学生の目線に近いところで共感してくれた。

藤井

職員の立場というよりも、完全に学生目線で「わーすごいな、いいな」と純粋にワクワクしたのを憶えています。

佐藤

まだキャンパスも何もないのにね。でも、同じように一期生もワクワクしてくれた。

藤井

一番印象に残っているのは、AO入試のときです。受験生同士はオープンキャンパスなどでほとんどが友だちになっていて、しかも熱いんです(笑)。面接の控え室でも、誰かが呼ばれるたびに「次は入学式でな!」とか声掛け合っている。そんなこと、普通の学校ではあり得ないですよね、入学試験なのに。

佐藤

誰かが「もう会えないかもしれないけど」と言うと、「バカ言うな!一緒に入学するんだ」とハグしたりしてね(笑)。

藤井

だから、私も堅苦しく接するのではなくて「頑張ってね!」と。そんなこと言っていいのか分からないですけど、一人ひとり熱い気持ちで送り出しました。
そんな雰囲気だったので、きっとみんなの気持ちのなかに「もし、だめだったとしても、次のチャンスで絶対受かりたい」という気持ちが増したのではないかと思います。

佐藤

実際に何度もチャレンジして入学してくれた学生もいました。偏差値といった基準ではなく、本当にCUBEのファンになった子がたくさん来てくれた。それが素晴らしいことだと思います。

Q.
いつ頃からCUBEファンが生まれたのでしょう?
藤井

高校説明会で、佐藤さんの話に惹きつけられた子が徐々に増えてきて、夏のオープンキャンパスの頃には、最前列にいつも同じ顔ぶれが並ぶようになりました。みんな違う高校なのに意気投合してて、早く来た子が先に席をキープしてあげたりと。

佐藤

なんでそうなったのか、本当に不思議だね。最初はまじめな話をしていたけれど、職員がおもしろくないと言うので自分の想いをそのまま伝えることにしたら、みんなの目が急にキラキラし出した。

藤井

それは側で見ていても感じました。受験生たちの心の中でモヤモヤしていた不安や疑問が、佐藤さんの言葉に触れることで何か変化が起こり始めたのでしょうね。ちゃんと生きろとか、自分の未来は変えられるとか。

佐藤

本来、教師は勉強以外にも教えることが山ほどあります。生きることについてとか、失敗したときにどう立ち直るかとか。本当に大切なのはハートなのに、戦後はその教育をやめてしまったために、今の日本は大事なものを失いかけている。それさえしっかりしていれば、勉強なんていつでもできるのです。
勉強そのものは、多少出遅れたってすぐに追いつける。でも、追いつくためには情熱と根性が必要で、成し遂げたい何かがないといけない。それを自分の中にもつことが先なのです。

藤井

私はそれをいつも聞きながら、先に熱狂的なCUBEファンになってしまった(笑)。でも、そういう話ができるのは、佐藤さんご自身がそういう生き方をされているから。だからこそ、受験生たちの心に響いたのだと思います。

佐藤

僕は妥協しません。それが自分の生き方だから、そこを変えてしまうと自分でなくなるから。

藤井

「正義と平和」という話が私は大好きです。「正義をとおさないと本当の平和は手に入らない。妥協するだけでなく、戦うべきときは戦わないといけない・・・」という話。
1年に1回くらいはCUBEにお邪魔していますが、佐藤さんはぜんぜん変わらないので安心します。お会いするたびに、自分のなかの佐藤イズムはちゃんと燃えているなと確認できますし。

キャンパスもまだないのに、この学校に来たいという子がたくさんいた。だから、一日も早く喜ばせたかった。

Q.
熱い受験生たちが集まってくれた。だから、無茶なスケジュールでもオープンデーを開催したのですね?
佐藤

キャンパスの引き渡し翌日にね。一部の人は無理だと言ったけど、僕を止める理由にはならないと言いました。キャンパスもないのにこの学校に来たいと思ってくれた子が何人もいた。いい学校を作りたいと戦っている僕たちの、まるでサポーターのように応えてくれる受験生たちがいた。
だから、一日でも早くキャンパスを見せて喜ばせてあげたい、感動させたいと思ったのです。

藤井

だから、招待状も凝ったものを用意しました。佐藤さんがメッセージ入りのポストカードを作ってくださったので、それを結婚式の招待状のようにしたのです。きれいな封筒に入った二つ折りの招待状を開くと、「ついに、キャンパスが完成しました。まず一番に招待したいのはあなたたちです」と書かれていて。

佐藤

あれは良かったね。学生たちも、感動してくれたそうです。

Q.
開設準備室の団結力もすごかったのですね。
藤井

一つのチームでしたね。佐藤さんが示される理想の学校づくりに向かって、チーム全員がまとまっていました。最初の段階でもコンセプトを聞いて感動しましたが、さらに確信に変わっていったのは、受験生たちがそれに反応して変わっていく姿を見たときです。

佐藤

不思議なのは、高校生たちに語る職員の話を聞いていると、僕と同じようなことを言うようになってきた(笑)。

Q.
学生だけでなく、職員までも魔法にかかった。なぜ、そこまでの変化が起きたのでしょう?
藤井

一つはパッションが伝わるメンバーが揃っていたのだと思います。そして「そんな教育ができる学校がつくれるなら、絶対に実現させたい」という気持ちになっていった。佐藤さんの言葉には力がありますから。

佐藤

魔法学校なんて他人が聞いたら何言ってるんだ?と思うかもしれないけど、言葉はシンプルな方が伝わりやすいのです。みんな、頭の中で「何かが違う」と思っていても、それを言葉でうまく表現できない。それを言葉で表現してあげると伝わりやすくなる。言葉は素晴らしい道具です。
とにかく、みんなのエネルギーはすごかった。同じことをもう一度やれと言われてもできるか分からないね。

Q.
藤井さんは広報を担当されていました。熱いパッションをどのように伝えたのですか?
藤井

一番分かりやすいのは佐藤さんの話を聞いてもらうことでしたが、それをどう広報物に落とし込むかかなり悩みました。相手によって受け取り方も違うでしょうし、ポスターやチラシも複数の切り口で紹介したものを作ってみて、受験生たちの反応を細かくチェックしたりと、地道なマーケティングを重ねて。保護者向けのパンフレットを作ったことも理解を得られたようでした。

佐藤

私たちの目的は、他の大学に勝とうとか偏差値を上げるとか、そんな小さなことではないからね。会議でも話題になるのは、どうやってCUBEのファンを増やすかという話ばかり。来てくれた子をどうやって喜ばせようとか、どの話に感動したかとか。そんなこと真剣に議論している学校は他にないかもしれないね。
受験生を増やすことが目的ではなくて、本当にCUBEが好きになって一緒に学校を作ってくれる仲間をどうやって集めるか。来てくれた学生をどうやって成長させてあげるかを真剣に話し合っていました。

Q.
そういう意味でも、藤井さんは広報の適任でしたね。
藤井

でも、私自身がファンになればなるほど、受験生たちにはどれほど伝わっているのか分からなくなる時もありましたが(笑)。でも、毎日楽しかったですね。同時期に勤めだした人たちは書類のコピーを取ったり入力作業をしたりという日々でしたが、私はそういった会議にも出席させてもらったり、高校訪問にも一緒に回ったり。忙しそうで大変だと思う人もいたかもしれませんが、私自身はワクワクと楽しかったし、むしろありがたかったです。

佐藤

働いているという感覚よりも、一緒に生きているという感じが近い。CUBEの中には家族みたいな関わりがありますね。
働き方には、Job、Career、Callingという3つがあって、Jobは指示されたことをこなすだけ。Careerは自分が成長したいと思って働くこと。Callingは人のために貢献したいという思いから動いていること。CUBE開設のメンバーは本当に大変だったと思いますが、意識はCallingに近かったと思いますね。

生きる力を得たことは、人生をとおしての宝物。

Q.
CUBEでの経験は、藤井さんご自身の人生にも影響していますか?
藤井

私自身、CUBEに関わることができて本当に感謝しています。2009年5月に産休に入って、残念ながらそのまま離れることになったのですが、ずっと一期生のつもりで社会人をやっています。
人生のなかではいろいろ辛いこともありますが、そんな時こそ佐藤さんの言葉は力を与えてくれる。それでも真面目にコツコツと頑張ろうと思える。辛いときにこそ、人の言葉は支えになります。

佐藤

僕だって嫌なことはたくさんありますよ。でも、神様が教えてくれたんだと思う。たとえば、誰かに裏切られても、信じ切って裏切られるより早い段階で分かったんだから、これは神様が自分をもっと成長させるために与えてくれた試練だと思うんです。

藤井

すごいですね。私はなかなかそこまでは。

佐藤

人生はまだまだ続きます。挫折したり失敗しても、それを受け入れてそこからどうするかで人生の価値が決まる。たとえば、サッカーのJ1リーグに入れなくてJ2からのスタートでも、そんなことで腐るんではなく、僕がこのチームを上げてやるんだと思ってる人生の方がおもしろいですよ。
世の中には頭がいいだけの人は山ほどいます。でも、人の気持ちを理解して、何かをつくり出していく力の方がもっと大切。人間的な力をもっていない限り、本物は生まれてこない。

藤井

そういう言葉をずっと聞いていたので、私の精神支柱はそれなんですよ。だから、何かあっても戻ってこれる自分の軸を築くことができた。人生の中の短い期間でしたけど、CUBEに参加できて良かったです。
CUBEの学生たちも、もしかしたら社会に出てから、さらにここで学んだことの意味を実感できるのではないかと。長く生きてきた大人の方が、人生のなかでこれほど素晴らしい出会いはなかなかないことも分かりますから。

Q.
子育てにおいても実感しますか?
藤井

そうですね。娘は5歳ですが、感情的に怒りそうになっても「いや待てよ。佐藤さんが言っておられたように、ここは共感してあげるべきかな」とか。「分かるよ、たまにはこっそり隠れて食べるのが楽しかったりするもんね」と言うと、泣きながら「ごめんなさーい」と(笑)。

佐藤

うちの娘は神様を信じていましたよ。「今正直に謝ったら神様は許してくれるけど、嘘ついたら神様は見てるから、謝るなら今だよ」とか言うと、「ごめんなさい、嘘でしたー」ってなる(笑)。

藤井

今住んでいる場所はとても教育熱心なので、子どもが小さい時からいろいろな習い事に通わせることが多いんです。それを否定する訳ではないけれど、そんなことわざわざお金をかけなくても学べるのになと思うこともあります。アスレチック教室でなくても、おじいちゃんの田舎で山に行けばいいのにとか。
それは、本来あるべき教育について教えてもらったから分かることだと思います。

佐藤

好きなものを諦めて諦めて「勉強だけできればいいよ」と育てられると、好きなものが見つからない人になってしまう。好きなものが見つけられる人にしてあげたいね。

藤井

CUBEではどんな仕事をするときも、「なぜ、そう考えるのか?その意味は?」と問われて常に訓練されてきたので、物事をひとつ深く考える癖がつきました。今までは深く考えずに判断していたことでも、「もし、こうだったら?そうでなかったら?」といろいろな側面から捉えてみる。人生のいろいろな場面で深く考えるようになりました。

佐藤

CUBEの生徒みたいだね。

藤井

そうですね(笑)。CUBEを離れてからも、学生たちの活躍はずっとウェブサイトで見せてもらっています。「あの子がこんなにしっかりしたんだ」とか「社長のカバン持ち体験とか、いろいろな体験しているんだな」とか。

子育てが落ち着いてきたので、他の大学でキャリアサポートの仕事についていたのですが、そこでCUBEの学生の話が出たんですよ。甲南大学の学生むけに、就職活動のためのマナー講座を行った先生が「西宮キャンパスの学生たちがすごく優秀だった」と。それを聞いて「そうですか、そうですか!あの子たちは頑張っていますか!」と、とても嬉しかった。

佐藤

外部からの高い評価は聞こえるようになってきました。他大学の先生からも、「就活の議論で負かされたらしいが、CUBEってどんな学部なんだ?」と。学生は確かに育っています。

Q.
生きる力を身につけることは尊いことです。
藤井

そうですね、自称一期生の私からすると、CUBEで学んだことは人生のいろいろな場面で勇気を与えてくれる普遍的なもの。ここは松下村塾みたいな存在。そのお陰で、私も新しいビジネスを立ち上げたところなんです。

佐藤

学生も職員も、みんなここで経験したことを糧にして成長してくれているのは嬉しいです。 努力と工夫をすれば、人生はいかようにでも面白くなりますよ。どんな時代のどんな場所に生まれても、それなりの人生は送れる。
CUBEの学生たちは、他人を思いやる心や人生を切り拓いていく力を身につけているから、社会に出ても受け入れられるのだと思います。

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