大学卒業後のキャリアを意識した学部選択のススメ(2):新井康平

大学卒業後のキャリアを意識した学部選択のススメ(2):新井康平
大学卒業後のキャリアを意識した学部選択のススメ(2):新井康平
CUBE DIARY

大学卒業後のキャリアを意識した学部選択のススメ(2):新井康平

2008.10.02

1ヶ月弱ぶりの登場です。来年からCUBEで会計学を担当する予定の新井康平です。好きなからあげクンはレッドです。

今回は,前回9/8に投稿したお話の続きです。まだの人は,今回のお話を読む前に,
http://www.konan-cube.com/system/diary/archives/65
をどうぞ。

さてさて,前回は,学部を選択する上で,高校生が何に気を付けなきゃいけなくて,逆に,何に気をつけなくていいのか,というお話をしました。かいつまんでまとめると,高校生の段階では,そんなに学部選択で悩まなくていいヨ,むしろ,大学生になってから何が出来るかを考えましょう,ということです。で,今回は,じゃあ実際に学部でどのように生活したらいいの?という話題について,卒業後のキャリアとの関連でお話をしておきたいと思うのです。

でも,ちょっと待って!!そういえば僕の専門とする研究領域は,キャリア論ではなく,会計学でした。そうです。僕が語るまでもなく,世の中にはキャリアを研究している優れた研究者はいっぱいいるのです(例えば,お隣の甲南大学経営学部の尾形先生は,キャリア研究の優れた研究成果を持っています)。というわけで,あまり理論的な基礎がないまま議論するのもなんだかなーと思いたち,僕の現在の研究室の同僚であり,共同研究者として何本か一緒に論文を書いたこともあるキャリアや行動科学を専門にするH氏と議論してきました。議論の内容は,CUBEでの4年間の勉強の仕方です。

彼との議論をまとめると,次のような結論が出ました。それは,

「とりあえず,将来のキャリアなんか意識せず,CUBEのカリキュラムに従ってしっかり勉強なさい」

ということです。いやはや,キャリア論の専門家から「キャリアなんか意識すんな」と言われるとは衝撃でした。どれくらいの衝撃かというと,ドラクエでレベル1のときに遭遇したバラモスが「メテオ!」とか言ってくるほどの衝撃でした。えー,なんかいろいろ違うじゃん,という衝撃です。

でも,このような主張,実はキャリア研究では真面目に議論されている内容だそうです。最も有名な主張はStanford University(スタンフォード大学,アメリカ)のKrumboltz(クランボルツ)先生が提唱した「Planned Happenstance Theory(計画された偶然についての理論)」です。この理論のポイントは,大まかな方向性さえ決めたら,とにかく前に進もう,ということです。CUBEで言えば,CUBEに入ったんだったら,とりあえず目の前のカリキュラムに従ってしっかり勉強なさい,ということになります。

なぜ,このような主張が成立するのでしょうか。僕らは常に将来のキャリアを意識して,そのキャリアが達成できるように最大限の努力をして,大学の勉強なんかも将来に役に立ちそうなものとそうでないものに分けて勉強していった方が良いのでは?と思うかもしれません。そんな風に思った方,キャリアに対する認識が甘いぜ!と言わざるを得ません。そりゃもうクックベリーパイのごとき甘さであります。なぜ,甘いのかと言えば,

1. 将来のキャリアに役に立つ勉強,役に立たない勉強を区別することなんて絶対に出来ない
2. 常に将来のキャリアを意識しているなんて,ちょっと疲れてしまう

という2点に対する認識が甘いのです。

<役に立つ勉強と役に立たない勉強を区別することが出来ない,というお話>
まず,1点目。そもそも大学の勉強は,将来に役に立つものです。ただし,「すぐに役に立つ知識は,すぐに役に立たなくなる」という諺(ことわざ)の通り,大学で勉強する知識の多くはすぐには役に立たなくても,長期的な視野にたてば目茶目茶役に立つものです。そもそも,すぐに役に立つ知識が必要ならば大学に来る必要なんてものは全くないわけでして,CUBEでは,もちろんそういうことも教えはしますが,本質的に大切なことは,一生勉強を続けていくための能力を養うことにあります。つまり,基礎体力のようなものです。
もちろん,CUBEでのカリキュラムは非常に実践的であります。ただ,この実践的の意味を勘違いしてはいけません。よく,佐藤学部長(就任予定)が例え話で出すサッカーを例に考えましょう。基礎体力を養う上で,走り込みやドリブルの練習なんかは大事です。でも,毎日毎日,走り込みやドリブルをしていても大抵は飽きが来てしまうものじゃないですか?だから,CUBEでは,プロジェクト型の学習で特徴付けられるように,早い段階からサッカーのミニゲームに取り組むようなカリキュラムになっています。このようにして,なるべく飽きが来ないように工夫されたカリキュラムによって,単にサッカーがうまくなるだけではなく,他のスポーツでも基礎となる体力を養っておこう,というのがCUBEの特徴だと思うのです。スポーツに例えて話を進めましょう。学部を卒業して世に出ると,学生時代に勉強していたサッカーのようなスポーツだけではないたくさんのスポーツに出会うわけです。でも,全く違うようなスポーツに遭遇しても,学部時代にサッカーで養った基礎体力があるからこそ,そのスポーツでも活躍できるような人材を我々は育てようとしているのです。なんだか,例え話ばかりでわかりにくいかもしれませんが,何となくでも伝われば十分です。
話をCUBEでの勉強に戻しましょう。ここまでのお話から,自分が力を養う機会をみすみす逃してしまう恐れがあるため,短絡的に「将来に役に立つから」なんて考えてCUBEでの勉強を選り好みするのは,MOTTAINAI!というわけなのです。何が役に立つのかは絶対にわからないわけですし,そもそも役に立たない勉強なんてないわけですから。

<常に将来のキャリアを意識しているなんてちょっと疲れてしまう,というお話>
続いて,2点目について。我々は,毎日毎日,将来のこととか考えていると,ちょっと疲れてしまうそうです。かといって全く将来のことなんか考えていない,という人も困りものですよね。では,どうしたら良いのでしょうか。もちろん正解はないのですが,ひとつの重要な考え方は,「キャリアの節目では,過去のキャリアを振り返って,将来のキャリアをしっかり考えよう」という考え方になります。キャリアの節目と言うのは人によって違うのですが,これを読んでいる受験生の皆さんは,おそらく今が人生で最初の節目かもしれませんし,就職活動というCUBEに入って3年目に迎える時期も節目と言っていいかもしれません。いずれにせよ,キャリアを真剣に考えるのはあくまで節目に来た時だけであって,それ以外のときは目の前のことに集中してね,というのは,もうすでに社会で働いている我々にとっては非常にほっとするというか,ありがたいお話になります。実際,将来のことばかり考えていると,最初の一歩が踏み出せなくて,あーでもない,こーでもない,といろいろ考え込んでしまうものなのです。だから,とりあえずは目の前のことに集中すればいいさ,というこの考え方は,キャリアを考える上で実はすごく大切になるんですね。
CUBEに入った皆さんが,ひとまずは目の前のカリキュラムに集中してしっかりと勉強するのがいいのでは,ということの根拠には,こういう考え方があるんですね。

以上,あいかわらず長い文章で恐縮ですが,CUBEでは,絶対に役に立たない勉強なんかはさせませんので,将来のことが決まっている人も決まっていない人も,とりあえずは目の前の勉強に集中してください。そうすると,そのうち,将来のことが決まっていない人でも意識せずとも将来の方向性が出てくると思うのです。おっと,受験生の皆さんは,大学での勉強の前に,受験勉強に集中ですね。

ではでは,まだまだ話足りませんがこの辺りで。長い文章を読ませてしまいましたが、この後は英単語の一つでも覚えて、受験勉強頑張ってください。


<参考URL>

今回のお話の際に参考にしたWeb Siteは次の2つです。前者は,日本を代表する経営学者の楠木先生が書いた大学教育についてのエッセイのpdfファイルです。非常に読みやすいので受験生の皆さんでも一読の価値があります。後者は,やはり日本を代表する経営学者の金井先生がキャリアについてのご自身の著作について簡単にまとめてあるページです。キャリアのお話に興味を持ったのなら,一読の価値があります。

・http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/12231/1/ronso1130400210.pdf
・http://mba.kobe-u.ac.jp/research/work/2006/career.htm

甲南大学
Copyright © Konan University. All Rights Reserved.
ページの先頭に戻る