成績表から考える会計学のあれこれ(新井康平)

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CUBE DIARY

成績表から考える会計学のあれこれ(新井康平)

2008.11.28

どーも,新井康平@会計学担当です。いよいよ冬本番ですね。冬は,町中がキラキラしていてて,何だか独り身には辛い季節ではあります。

多くの高校生の皆さんは,人生最後の「期末試験」でしょうか。もちろん,大学でも試験はありますが,試験週間があって部活が休みになって試験当日は早く家に帰れて…,という形式での試験はこれが最後でしょうか。

さて,試験が終われば,当然のように学期の成績表(通知表)が返ってきますネ。いやですネ。僕は,高校一年生の時に漢文で赤点をとって以来,成績表はトラウマです。でも,何で成績表なんてあるのでしょうか。今回は,この成績表の役割をもとに,前回のエントリーの続きとして,会社の成績表である財務諸表について語ります。今日は,なかなか難しい学部2年生レベルの話です。大学で学ぶ内容について,こんなことなんだー,と感じていただければ幸いです。

それでは,本論です。
まず,成績表の役割です。成績表がないと学生さんは何に迷ってしまうのでしょうか。困る点は大きくは2つあります。
1つ目は,自分がどれだけ勉強出来るのか,どのような科目が得意だったり苦手なのか,がわからなくなってしまって困ってしまうのです。これは,成績表が病院のカルテ(診断表)のような役割を果たしているということを意味しています。学生は成績表の結果をもとに,自分の状態を理解することが出来るということです。
2つ目は,成績表がないとそもそも勉強をがんばる気が起きない,ということです。成績表を保護者の方などから隠しておくのはなかなか大変です。もし,いったんひどい成績表が保護者に見られた日には,たっぷりのお小言をくらってお小遣いの減額くらいはさせられるかもしれません。こんなことは是非とも避けたい事態ですね。このことからもわかるように,成績表が自分以外の誰かに見られてしまい,勉強をさぼっていたらそのことがばれてしまうため,それを未然に防ぐために勉強をする気がおきるということです。

成績表の役割をまとめましょう。前者の役割を「情報システム」としての成績表といえるかもしれません。学生自身や保護者が,勉強の習熟度について理解するための役割を担っているわけです。後者の役割を「影響システム」としての成績表としましょう。学生自身が,最終的に自身の努力の結果が自分以外の誰かに伝達されるため,勉強をするよう仕向けられる,というわけです。

このように,我々が日常的に遭遇している成績表,その役割を考えると少なくとも情報システムと影響システムとしての2つの機能があることをご理解いただけたでしょうか。実は,学生に対して成績表が公開されるのと同様に,会社が赤字だったり黒字だったりといった成績も,一定の期間ごとに公表されます。これを「財務諸表」(あるいは決算書)といいます。ただ,財務諸表は成績表と違って,多くの企業がより一般向けに開示しています(これをディスクロージャーといいます)。下の写真にあるように,インターネットから簡単に多くの会社の財務諸表をみることが出来ます。

ではでは,何で会社が財務諸表というものを作って,それを多くの会社が公開しているのでしょうか。これは,成績表と同様に,情報システムと影響システムの役割から説明できるのです。

まず,「情報システム」としての財務諸表です。企業の社長や従業員はもとより,企業にお金を貸している銀行や,その企業の取引先,企業にお金を出している(出資といいます)株主さん,などは,みんな企業が健全かどうかを知りたくてしょうがないわけです。ですので,会社は自らの成績表を作ります。企業内部だけではなく,企業外部にもその情報が知りたい人たちがいるので,情報を開示しようとします。また,情報を開示しておけば,銀行などが安心してお金を貸したリが出来る訳ですし。

続いて,「影響システム」としての財務諸表です。企業には,従業員や社長以外にも,企業にお金を出して,出資をしている利害関係者と呼ばれる人たちがいます。利害関係者にしてみれば,企業の中の従業員や社長が,出資した資金をちゃんと運用して,社長がお金をちょろまかしていないかどうか,あるいは,ちゃんと利子を付けて返してくれるのかどうかに興味があります。ですので,利害関係者がこの財務諸表を通じて,経営者の活動を監視出来るわけです。それはもう,保護者が皆さんの成績表をみるように。

というわけで,企業は成績表を公表しているわけなのです。でも,成績を計算する方法は企業によって異なっていたら企業間の比較が出来なくなりまってしまいますよね。同じ高校の中で成績のつけ方が違っていたら,困ってしまうのと同様です。そこで,日本では財務諸表を作るための規則が決まっています。GAAP(一般に公正妥当と認められた会計原則,ギャープなどと発音します)といわれる規則ですね。実は,この規則,日本国内だけではなく世界共通にしようという動きが最近顕著なんです。会計学は現在進行形。この続きのお話は,「アカウンティング」で。

大学の講義,特に会計学ではこういう形で講義が進んでいきます。前回と今回で,CUBEでの講義の一端がわかっていただけたでしょうか。是非,みなさんと対面でこのような講義が出来ることを楽しみにしています。受験がまだの人はいまが正念場ですね。体に気をつけて,受験勉強に励んでください。

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