狼と国富論(新井康平)

狼と国富論(新井康平)
狼と国富論(新井康平)
CUBE DIARY

狼と国富論(新井康平)

2008.12.19

もうすぐ冬休みですね。新井康平です。師走,とはいい得て妙で,結構忙しいですね。
さてさて,これを読んでいる高校生の皆さんは,受験生の人もいれば,もうCUBEへの入学が決まった人もいるのでしょうか。今回は,特に受験が終わった段階で読んでおいて欲しい,本の紹介とかしちゃいます。CUBE合格者の人は,是非お正月に読んでください。

2冊紹介しますね。軽めと重め。

軽めの本は,小説で「狼と香辛料」です。これは,Amazon.co.jpの紹介文によれば,

「行商人ロレンスは、麦の束に埋もれ馬車の荷台で眠る少女を見つける。少女は狼の耳と尻尾を有した美しい娘で、自らを豊作を司る神ホロと名乗った。「わっちは神と呼ばれていたがよ。わっちゃあホロ以外の何者でもない」老獪な話術を巧みに操るホロに翻弄されるロレンス。しかし彼女が本当に豊穣の狼神なのか半信半疑ながらも、ホロと共に旅をすることを了承した。そんな二人旅に思いがけない儲け話が舞い込んでくる。近い将来、ある銀貨が値上がりするという噂。疑いながらもロレンスはその儲け話に乗るのだが―。第12回電撃小説大賞“銀賞”受賞作。」

という本です。普通に読み進めていけば,面白さをわかっていただけるかと思われます。
ですが,CUBEの学生になる予定の皆さんにはそれ以上の読み方を期待しています。是非,「お商売」あるいは「商(あきない)」と呼ばれる行為の本質をこの本から学び取って欲しいと思うのです。いくつかのポイントはあるのですが特に重要だと考えるのが「希少性」,つまり滅多に存在しないことの価値が,この小説では1巻以降も一貫して商売の機会として描かれています。

この希少性という問題は,現在の経済の根本の一つです。生きていく上で必要不可欠な水は安いのに,生きていく上で必ずしも必要ではないダイヤモンドは何故高いのか,といった問題は,まずもってこの希少性の概念から考えてみると良いでしょう。

もうひとつ,今度は重めの本を。「国富論:国の豊かさの本質と原因についての研究」です。歴史の教科書でも出てきますね。この本,かなり読みやすくて,高校生でも十分いけます。これも,Amazon.co.jpの紹介文をみてみましょう。

「市場とは、労働とは、豊かさとは―。経済と社会のしくみ、本質を、わかりやすい例と平易な言葉で解き明かした政治経済学の金字塔。画期的新訳で甦る不朽の名著。」

という本です。著者のAdam Smithをこの本をもって経済学の祖と考える人もいます。このエントリーを書くために,久方ぶりに読み返してみましたが,本当に経済の本質的なことが書かれまくっています。そんなに難しい言葉ではないのに。彼が生きた時代は,先ほど挙げた「狼と香辛料」の時代設定より少し後です。つまり,工業化が始まるころです。ここで,彼の本によって経済についてもう一つ重要なポイントが加わります。それは「分業」です。

少し大雑把に,誤解を恐れずに言えば,「希少性」の考え方は個人が豊かになるために,「分業」の考え方は皆が豊かになるために重要なものです。これらの本を読んでからは「希少性」と「分業」という2つの眼鏡をかけて,日々の町並みを眺めてみてください。いろんな問題を解決できるかもしれませんし,新しい問題を発見できるかもしれません。考える訓練としても有効だと思いますので,これは是非お薦めであります。

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